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絶対 ないしょ

むかし、ある男の人が人をひとり殺しました。そして、血のついたナイフを手にしたまま、お寺の前をとおりかかりました。本堂の前まで来ると、中国の昔話に出てくるような獅子の像が、階段のところに立っているのが目に入りました。そこで、近づいて、ナイフの刃についた血を獅子の口でふき取りながら、言いました。
「おれは人を殺してきた。お前だけが知っているが、誰にも言うなよ」
言い終わると、獅子が
「私は、石の獅子。何も言わないさ。言うのは、おまえ自身のほうだ」
男は、獅子の言ったことがよくわかりませんでした。

さて、何かを秘密にしておくというのは、本当にむずかしいことです。誰でも何か見たり知ったりしてしまうと、他の誰かに言わずにはいられないというものです。はたして、この男もそうでした。家に帰るとすぐ、奥さんに、しゃべる石の獅子の話をして聞かせましたが、奥さんは、
「そんなばかな」と相手にしません。
それで男は、
「本当に話したんだぞ。だって、俺は、獅子に“おれは人を殺してきたが、誰にも言うなよ”と言ったら、獅子は“私は言わないが、おまえが、自分で誰かに話すだろう”って言ったんだ」と話してしまいました。そして、市場のすみっこで、人を殺してしまったことを、奥さんに話して聞かせ、最後に、
「絶対 ないしょだぞ」
と言いました。

奥さんは話を聞くとすぐに、母親に話して聞かせ、最後にこう言いました。
「絶対 ないしょね」

しばらくして、その母親は、誰かに話さないとどうにかなりそうで、だんなさんに話して聞かせました。そして、つぎの日の朝、そのだんなさんは友達とすわってコーヒーを飲んでいました。あれこれ話して何も話すことがなくなると、最後に娘婿が人を殺したことを話してしまいました。するととてもすっきりして、
「絶対 ないしょだぞ」
と友達に言ってきかせました。

男が誰も知らない秘密だと思っていた殺人の話は、あっという間に、町中の人が知るところとなり、男はとうとう警察に捕まってしまいました。殺人の証拠も、目撃者も、証人も何も見つかっていませんでしたが、町中の人が、男が人を殺したことを知っている、それだけでじゅうぶんでした。男は観念して、自分のしたことを白状し、牢屋に入りましたとさ。

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