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カシアの木とキジバト

むかしむかし、ある家の前に、いっぽんのカシアの木がありました。葉が青々と生い茂り、枝ぶりもりっぱな木で、夕方になると、キジバトの群れが、舞い降りてきては、茂みにこっそり潜んでいました。

「それにしてもいい木だよな。こんなにとりたちが来るなんて」と家の主人が言えば、

「自然の恵みだよ。とりたちも、ここは居心地がよくて安全だって、よく知ってるもんだ。」と言う人もいました。

カシアの木は葉がよく生い茂り、絶好の隠れ家だったので、キジバトが何組かつがいでやってきては、集めてきた枝や葉っぱで、巣を作っていました。つがいでないとりも、ときどき飛んできては茂みで休み、朝になるとたべものを探しに飛んで行き、夕方になるともどってきて休む・・そんな幸せな生活をおくっていました。

ある日、群れのボスは、自分たちのほかに、はたおりどりが2羽こっそり住みついているのを見つけました。ボスは、自分たちこそがここの主だというので、はたおりどりのところへ行って、つつき回し、追い払おうとしました。小さなはたおりどりに勝ち目はなく、枝から枝へ飛び回って逃げることしかできませんでした。ボスはそれをしつこく追いかけていっては、探し出し、またつついたいので、そのたびに、枝が根元からゆれて、葉っぱがばさばさと落ちました。そこで、ほかのキジバトたちが、ボスに、はたおりどりたちをこの木にいさせてやろうとたのみましたが、

ボスは、「はたおりどりは、カシアの木じゃなくて、さとう椰子の木に住めばいいんだ。それがお似合いさ」と気に入らないようすで答えると、さらに、はたおりどりをつつき回しました。それから何日もしないうちに、たくさん葉っぱが落ちた木はすきまだらけになり、通りがかった人たちが、キジバトの姿をはっきりと見てとれるほどになってしまいました。

ある夜、カシアの木の下に2人の男があたりの様子をうかがいながらやってきました。ひとりは懐中電灯を、もうひとりは空気銃を手に、さっさと狩りをしてやろうと話をしていました。ひとりが懐中電灯で標的を照らし、もうひとりが撃つ手はずでした。キジバトたちは枝にじっとしていたので、ねらいを定めれば、百発百中。みんな撃たれてしまいました。男たちは別におなかがすいていたわけでも、生活に困っていたわけでもなかったのですが、ただ、ちょっと変わったことがしてみたいというだけで、キジバトの命の大切さなんてこれっぽっちも考えずに、狩りを楽しんだのでした。
  それからというもの、カシアの木にキジバトは一匹もいなくなり、はたおりどりだけが残りました。もうキジバトにじゃまされることなく、ずっとカシアの木でしあわせにくらしましたとさ。

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