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グライトーン

このお話はピチット県の、とある川にまつわるお話です。川の底に、ワニが支配する洞窟がありました。洞窟の中には、魔法のガラス球があり、周囲を明るく照らしていました。不思議なことに、洞窟の中にいる間、ワニは人に姿を変え、また、空腹を感じないので、ワニは何も口にすることなく、戒律を守り、暮らしていくことができました。

ワニ達の王はタオランパイという名の、年老いたワニでした。タオランパイは、長年の間、何も食べずに暮らしていました。タオランパイには、タオカジョーンという息子がおり、タオカジョーンにはチャーラワンという息子がおりました。

あるとき、タオカジョーンは別のワニ達との間に争いごとを起こし、それは大きな闘争に発展し、双方が傷つき、争いに巻き込まれたワニ達は皆命を落としました。

残されたチャラワンが、洞窟内のワニ達の王となりました。チャラワンはウィマーラーとルアムラーイワンという二人の妻を迎えました。人に姿を変えられるというのに、肉食獣としての天性の欲望に従い、チャラワンには人を喰うという獰猛さがありました。生き物を口にしなかった祖父と異なり、この新しいワニ王は、戒律など気にもかけませんでした。

ある日、チャラワンがいつものように人狩りにでかけると、川ではちょうど、ピジット国王の娘、タパオゲーオとタパオトーンの二人が水遊びをしているところでした。二人はたくさんの家来に見守られながら、楽しそうに遊んでいました。

それをみかけたチャラワンは、タパオトーンの美しさに一目ぼれしました。人を喰おうと獲物を探していたのですが、その獲物に恋をしてしまい、チャラワンは一直線にタパオトーンに向かって行きました。おびえる部下達をけちらしながら、目当てのタパオトーンを口にくわえると、チャラワンは悠々と川に戻って行きました。タパオトーンは、ワニにくわえられた瞬間に気を失っていました。チャラワンは、タパオトーンが意識を取り戻すまで、手厚く介抱しました。気がついたタパオトーンは、人に姿を変えたチャラワンの容姿に心を奪われ、第3夫人となることを承諾しました。3人の夫人の間では、度々争いが起こりました。

娘がワニにさらわれた、というショッキングなニュースを受け、ピジット国王は激怒し、また、娘の安否を大変心配しました。そこでワニを成敗するべく、娘を取り戻した者には娘と財産の一部を与える、というお触れを出しました。

ノンタブリ県に、グライトーンという18歳の若者がいました。船を所有し、ピジット県との間で交易を行っていました。仕事の合間に如術を学び、呪文で川を切り開き、道を作り出すことができまいsた。グライトーンは、ワニ捕獲の第一人者になりました。

グライトーンは王のお触れについて耳にすると、果敢にも化け物を退治しようと思いました。そして、如術の師のところに向かいました。事情を聞いた師は、グライトーンの化け物退治について占いを行い、グライトーンが必ず勝利をする、と予言しました。そして、化け物の歯はダイヤでできていて、また、皮膚は鋼の様に硬く、どんな武器も貫くことはできないので、川を切り開き、道を作るロウソクと刀と槍の、3つの魔法の武器を授けました。

ある日、チャラワンは、天から炎とともに現れた神により両刃の刀で喉を切り裂かれる夢をみました。目覚めたチャラワンは恐ろしくなり、祖父の元を訪れました。祖父はすでに孫の危険を察知しており、7日間は絶対に洞窟の外に出ないように、もし出れば、恐ろしい危険に遭遇するであろう、と告げました。チャラワンは祖父の言葉に怯え、手下に命じて洞窟の入り口を岩で塞ぎ、祖父の忠告通り洞窟に身を潜めました。

ちょうどそのとき、師に別れを告げたグライトーンが筏に乗って現れました。化け物胎児の噂を聞いた村人が川岸でグライトーンを見守りました。

洞窟の中に隠れていても、チャラワンは自身の運命から逃れることはできませんでした。グライトーンが呪文を唱え始めると、チャラワンの体は火で焼かれるように熱くなりました。時がたつに連れ痛みは激しさを増し、ついにチャラワンは祖父の忠告を忘れ入り口を塞ぐ岩を蹴散らすと、洞窟の外に飛び出しました。そのとたん、チャラワンは大きなワニに姿を変えました。静かな川面に突然巨大なワニが暴れ出ました。その瞬間、チャラワンとグライトーンの闘いが始まりました。そして、グライトーンの槍がチャラワンの心臓を一突きしました。川は一瞬でチャラワンの血で真っ赤に染まり、辺りには血の匂いが漂いました。チャラワンは洞窟の中に逃げ込みましたが、グライトーンも魔法のロウソクで川を切り裂き、川底を歩いて追って行きました。

洞窟に入ると、チャラワンの妻、ウィマーラーがいたので、グライトーンはチャラワンをおびき出そうとウィマーラーを捕らえました。チャラワンは祖父に助けを求めに行ったのですが、タオランパイは忠告を破った孫を助けることができませんでした。

ウィマーラーの悲鳴を聞いたチャラワンは、怒りに身を任せ、飛び出してきました。そこでグライトーンに息の根を止められました。

闘いに勝利したグライトーンは、タオパトーンを救い出し、川から上がりました。岸辺から歓声があがり、住民がグライトーンを褒め称えました。

ピチット国王は娘を救い出してくれたグライトーンに約束通り娘を与え、もう一人の娘、タオパゲーオもグライトーンの妻として与えました。また自分の資産の一部も分け与えました。

3人はピチット県で幸せに暮らしました。グライトーンのは、人から人へ伝わり、最後にはタイ国中に語り継がれていきました。

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