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香髪姫(ナーンポムホーム)

昔々のお話です。ワーピ王国はセーンカム王とカムメーン王妃により統治されていました。国王夫妻はずっと子宝に恵まれず、神様にお願いをして、ようやく子供を授かりました。子供は、それはそれは可愛い女の子で、夫婦は「ティダー」と名づけ、大切に育てました。ティダーは両親の愛に包まれながらすくすくと育ち、たいへん美しい娘に成長しました。

15歳になり、そろそろ結婚相手を見つける時期になりました。ある日、ティダーは、両親に許しを請うて、森に遊びに行きました。そこで巨人に襲われ、家来の何人かが捕まり、食べられてしまいました。ティダーはやっとのことで巨人から逃げましたが、お供の家来とはぐれてしまいました。森をさまよっているうちに、喉が渇いてきました。するとちょうと、水溜りを見つけました。それは、水牛の足跡にたまった水でした。透明で清潔そうだったので、一口飲んでみました。不思議なことに、喉の渇きは一層ひどくなりました。
飲めば飲むほど喉が渇きます。ティダーはとうとう水をすべて飲み干してしまいましたが、喉の渇きは収まるどころかひどくなっていました。
ティダーがふと見ると、隣には象の足跡に水溜りができていました。こちらの水も大変澄んでいたので、飲んでみました。一口飲むと、喉の渇きが少し癒されました。そこでティダーはそこの水も全て飲み干しました。飲み終わったときには喉の渇きはすっかり収まっていました。そして不思議に元気が沸いてきて、ティダーはお城まで無事に帰ることができました。

その日から程なく、ティダーは妊娠しました。両親は驚き、父親について尋ねましたが、ティダーにも思い当たりません。10ヵ月後、ティダーは双子の女の子を出産しました。
長女の髪は生まれた時から良い香りがしました。そこで長女はポムホーム(香髪)と名づけられました。次女は、ルンと名づけられました。
ポムホームは優しく思いやりのある子でした。一方ルンは嫉妬心が強く乱暴者でした。二人は母親に似た美しい娘に成長しました。

ある日、ポムホームとルンは、父親を探しに森の中に行ってみたい、とお願いしました。母親の許しを得ると、二人揃って森の中に入っていきました。

何日も何日も探しまわり、二人はとうとう象王と出会いました。象は森の奥深く侵入してきた二人を見て、襲いかかってきました。ポムホームが命乞いをすると、象王は一体どういうわけで、女の子二人がこんな森の奥まで来たのか、と尋ねました。
ポムホームは二人がティダーの子供で、象王の子と水牛王の子であると説明しました。ルンは自分こそ象王の子であるので、殺すのならばポムホームを殺してくれ、と言いました。ポムホームは、今はまだどちらがどちらの子であるか分からないが、もし、自分が象王の子でなかったことが分かったら、その時には殺されてもかまわない。だから、自分に確かめさせて欲しい、といいました。象王はポムホームの言い分を認め、どちらが自分の子であるか確認をすることにしました。象王は二人に、牙をよじ登り、象王の背に乗ることができた方が自分の子だと言いました。
ルンは自分が象王の子であると確信していたので、張り切って牙をよじ登ろうとしましたが、何度やっても、途中で滑ってしまいます。ルンは水牛王の子だったのです。頑張って登ろうとしても、どうしても落ちてしまいます。象はルンに止めるよういいました。
ポムホームが試してみると、いとも簡単に背中まで登ることができました。ルンはポムホームが簡単に登れたのを見て、また登ろうとしました。しかし、やはり滑り落ちてしまいます。象王の制止を聞かず、何度も何度もよじ登ろうとするので、象王はルンを足で踏み殺しました。

象王はポムホームを自分の家に連れて帰りました。部下に石宮を作らせ、そこをポムホームの家としました。
ポムホームは父親と出会えたことを嬉しく思いましたが、一方で妹のことが可哀想でならず、かといって父親に対して意見することもできず、父親の背中で泣くだけでした。


象王は娘を大切に育てました。ポムホームがどこへ行くときにも、背に乗せて連れて行きました。

ポムホームは長い間象王と一緒に森の中で暮らしましたが、人間は自分ひとりだったので、とても寂しく思っていました。また、女性として、誰か気持ちを共有できる男性とめぐり合いたい、とも思いました。そこで、一計を案じ、小さな小箱を用意し、川で沐浴する際にその小箱に自分の香りのする髪を1本入れました。

そして願い事を唱えました。

小箱よ、私の髪を乗せて、河を流れていってちょうだい
髪の香りを消すことなく、私の運命の人の元に運んでちょうだい
運命の人以外が拾おうと思っても、決して拾われず、運命の人が拾おうとした時には、その人の手の中に入り、その人が髪の香りをたどって私のもとまでたどり着くように

こう願うと、ポムホームは小箱を河に流しました。

ラッタナー国に、ラッタナーという王子がいました。

ある日、ラッタナー王子の一行が川遊びに行ったところ、川上から良い香りが漂ってきました。それは、とても不思議な、はじめての香りでした。
家来達は川を流れてくる小箱を見つけ、われ先に取ろうとしましたが、いくら頑張っても、小箱はスルリと動き、捕まえることができません。
騒ぎを聞いたラッタナー王は、自分で捕らえてみようと、川の中に入って行き、小箱に手を伸ばしました。すると、小箱は簡単に王子の手の中に納まりました。 小箱からはあの良い香りが漂ってきます。開けてみると、中には一本の髪の毛が入っていました。

こんな良い香りの髪の毛は、天使の髪の毛に違いない。もし、人の髪ならば、きっと素晴らしい人に違いない。ぜひ、我妻として迎えたい。

そう思ったラッタナー王は信頼のおける部下に国を任せ、一人で髪の持ち主を探す旅に出ました。川の流れに沿ってさかのぼっていきました。何日も何日も行くと、やがて、あの香りがどんどん強くなってきました。王子は、この辺りに違いない、と確信しました。

その日、象王は家来と一緒に出かけており、ポムホームは一人で留守番していました。川に沐浴に行くと、ちょうど、小箱を流した場所にたどり着いたラッタナー王子と出会いました。
前世から結ばれていた二人は、お互い一目で恋に落ちました。

その日から、ラッタナー王子はポムホームの石宮で生活しました。ポムホームは、王子に、一緒に暮らしたいのなら、石宮から一歩も出ないように、といいました。象王が怒ってラッタナー王子を殺してしまうことを恐れたからです。
象王は、娘以外の人間の匂いがするので、おかしいと思いつつも、外から石宮を窺うだけで、娘に遠慮して直接尋ねることはしませんでした。

王子とポムホームは二人の子供をもうけました。
兄を シーラー 
妹を チャーダー と名づけました。

3年後、二人は父親に真実を告げることにしました。真実を告げられた象王は、娘が自分に隠し事をしていたことを嘆き悲しみ、その悲しみのあまり、病床に伏してしまいました。そして、ポムホームが自分を置いて、出て行くつもりだと知ると、さらに悲しみ、「良い妻となりなさい」と告げると、目に涙を浮かべたまま息を引き取ってしまいました。その瞬間、象王の牙の一つが船に、もう一つがオールに形を変えました。二人は悲しみ、象王に最後の別れを告げました。

王子は、ポムホームを船に乗せ、自分の国へと向かいました。四人で旅を続けていると、森の幽霊がラッタナー王子のことを気に入り、ポムホームが沐浴をしている際に川に突き落とし、ポムホームに姿を変えてラッタナー王子の元に戻りました。しばらくすると、ラッタナー王子はポムホームに化けた森の幽霊の行動を怪しみ、事実を問いただし、ポムホームを助けに行きました。

その後、家族を連れて国に戻ったラッタナー王は、ポムホームを后として迎え、家族で幸せに暮らしました。

訳者より:タイスタッフはこのお話を読んで一言、「大変タイらしい終わり方です」と感想を述べました。その言葉が表すとおり、大変唐突に終わっています。個人的には、水牛王にも一度くらい出てきて欲しかった。そう、思います。

美しい挿絵は、ウボンラーチャターニー師範大学よりご提供を受けました。

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